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お寺の標語 ② ~ 白露の頃'15


           子は親の思うようには育たない
           子は親のするように育つのだ

 こちらもどこかのお寺の掲示板で見かけ、深く印象に残っている言葉です。
 「親の背を見て子は育つ」「子は親の鑑」と同じ含蓄ですが、子どもの頃の親や大人の接し方が、子どものその後の人生や人格形成に深い影響を及ぼすことはよく知られています。それに気づくことなく成長し、以降の人生においてさまざまな壁に当たり、なぜ自分はこうも悩み苦しむのか自らを責め続ける人も少なくありません。


 子も人間なら親も人間、大人とて間違いも犯すし、未成熟な部分や欠点も当然あります。反面教師としての親も受け入れ学びつつ、同時に親への変わらぬ尊敬の念と深い情愛を抱き、何のわだかまりも屈託もなく、すくすくと大人への階段を昇っていく、というのが理想かもしれません。しかし現実には、私たちの誰もがそのように子どもの頃から高く安定した自己をもって生きることは、なかなか容易なことではありません。

 なぜなら生きていくうえでいわば絶対的な支配権を握っている親や大人に対して、幼い子どもはまだとても不安定で無力な存在です。子どもが親や養育者をはじめ、周囲の大人たちや養育環境から安全や安心という生きるに必須の情緒的基盤を与えられないまま、
どのような形であれむしろ否定されるようなメッセージを受け取ってしまう体験をさまざま積み重ねてしまえば、成長途上にある幼い子どもの心は、生き物としてその生存を脅かされるほどに強く根源的な恐怖や不安、緊張感によって常に覆い尽くされてしまうかもしれません。

 それが間違っていようと根拠なきものであろうと、そんな思い込みがよもやその後の自分のものの考え方、生き方の根底にあるなどとは、もちろん思いもつきません。
 こうしてその後子どもが成長し、成人となった今現在においてもそうしたメッセージの数々は様々なネガティブな思い込みとなって、日々存続・強化されわたしたちの日常に立ちはだかります。そのことに気づき直していくのはとても容易ならざることなのです。

 大人は、子ども(たとえいくつになっても)はあらゆる面において親に依存していることを忘れてはなりません。
 足早に大人扱いし大人目線の言動で接したり、過度の期待や課題、周囲との比較を課し、なにがしかの条件をクリアしなければ本当の愛を受け取ることができない、と子どもが誤ったメッセージを心に染み込ませることのないよう、常に慎重にならなければなりません。
 
 町なかで目にする何気ないこうした短い言葉は、ときにこうしたカウンセリングの専門領域に行きつくほどに、ありがたくそして深刻なメッセージを私たちに投げかけてきます。


 ところで前回も触れましたが、そもそも気晴らしにウロウロするという行動を選択しなければ、こうした言葉に出会わなかったこと思うと、少し大げさですがなにはともあれ何か行動を起こす、始めてみるってやはりときに大事かなとも思います。たとえそこから期待していたものとは別のことが起きたり起きなかったりしたとしても、行動の変化は私たちの心にも変化をもたらす第一歩になります。とはいえ、そんな決断や勇気が持てないときだって人生にはたくさんあります。できるときにできることから少しずつ。できてもできなくても自分を責めず自分にもっと優しくいましょう。(201597日)

  
メンタルケア&カウンセリングスペース C²-Wave 麻布十番


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by yellow-red-blue | 2015-09-07 10:43 | Trackback | Comments(0)

メンタルケアと心の相談室 C²-Waveのオフィシャルブログです。「いま」について日々感じること、心動かされる体験や出会いなど、思いつくまま綴っています。記事のどこかに読む人それぞれの「わたし」や「だれか」を見つけてもらえたら、と思っています。


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