悩みの作法(Ⅱ)~ 小暑の頃’17


悩みの作法、つまり正しい悩み方の秘訣が、「姿勢」「力を抜く」「呼吸」にあると前回のブログで述べました。「姿勢を正し、肩の力を抜いて、呼吸を調える」ことが日常生活のさまざまな場面においてとても役立ってくれます。呼吸と姿勢という、誰もがこの世に生を受けて以来、毎日欠かすことなくおびただしい回数を繰り返してきた、人間にとって最も自然かつ基本的で、自律的・無意識的な営みを少しずつ見直すことができれば、それはすなわちストレスや悩みに傷ついている身体的・精神的健康の向上に直結する一番の近道、特効薬といえるのではないでしょうか。

またこれほど特別に時間やお金をかけることなく日々繰り返し練習することができ、生きること生活すること自体がそのままトレーニングといえる、したがってその他のどの方法より早く確実に成果が期待できる心身の健康法もないかもしれません。ジムやマッサージに通い、健康器具やサプリメントを試し、書店に並ぶ心理学や自己啓発の本を読み漁り、はたまた気分転換に旅行やレジャー、買い物に走らずとも、居ながらにして自分でいることだけで身につく、お手軽でしかし究極の健康法であるといえます。大袈裟に聞こえるかもしれませんが、「呼吸と姿勢を制するものは人生を制す」かもしれません。

心身が穏やかに調うことによって、今まで八方塞がりのように思えてきた物事におのずと取るべき新たな方向や可能性が徐々に見えてくる。それに向かうエネルギーが自身の中から湧きあがってくる。自然と自分がただ「そうなっていく」あるいは「なにかむこうからヒョイとやってくる」というような感覚の体験に開かれていく。余計な考えや心配事がたとえ心に浮かんだとしてもそのことが負担とならずに、今現在やることにただ注意が向き集中できる、つまり自然体でいることができるようになる。呼吸と姿勢と聞くと簡単に誰もがすぐできそうなのですが、日常生活でいざ実践してみるとそう簡単なことではないことがわかります。それこそ呼吸と姿勢のくせのつき具合にも人それぞれに年季が入っているので、一朝一夕に変わるわけではないからです。ですが、長く実践し続けている人ほどさまざまな効果を実感します。実感できるのでその習慣がただ続いているともいえます。

このことはいわば「形(型)から入る」ことともいえます。私たちは自分の心の状態を上手にコントロールすることはなかなかできません。できないのなら身体に変化をつけ、まず形(型)に自分をはめ込んでしまうことによって、それに連動・刺激され心も整ってくるという方策をとるわけです。「形から入る」「形ばかりにこだわる」とちょっと聞こえは悪いですが実は効果があるのです。座禅やヨーガ、ストレッチやジョギングなどの姿勢とも共通するものです。


 ではその具体的な方法ですが、

①場所を確保する。

②安定した姿勢で座り、肩の力を抜き、呼吸を調える。

③常に姿勢と呼吸に穏やかに注意を向けただ座り続ける。

と、この3つだけです。以下にいろいろ説明をしていますが、大切なのは①~③のことをただ続けるだけです。姿勢と呼吸に関心と注意を払うかぎり正しいも間違いもなく、いつどのくらいの時間やらねばならないのかということもありません。姿勢をとる最中に心や身体の中で起きることいっさいに何ら評価や判断を加えたりまた否定的にならずに、ただあるがままに観察し受け入れ、そしてまた呼吸と姿勢へと戻ることを続ける。これにつきるということを覚えておいてください。


1.悩むにふさわしい居場所を準備・確保しましょう。

前回ブログにも書きましたように、悩みや不安を持つことにもっと敬意を払って、ふさわしい扱いをしましょうということです。できるだけ一人静かに落ち着けると感じる環境であれば、場所はどこでも構いません。自宅や仕事場、その他お気に入りの場所など屋内外問わずです。1か所でも複数でもいいのです。考え事や悩むにふさわしい場所について真剣に吟味して決めておきましょう(もちろんそこでしか悩んではいけないということではありません)。きちんと悩むことができる「特別な私の場所がある」という意識を持っておくことが大切なのです。

 

2.まっすぐの姿勢で座り、肩の力を抜き、呼吸を調えていきましょう。 

椅子に腰かけても座禅の要領で床に座っても構いません。椅子の場合には背もたれにはよりかからないように座りましょう。腕は膝の上など楽な場所に置きます。骨盤を軽く起こし、上半身が骨盤の上に自然と載って伸びているようなイメージで座ります。首と頭も肩のうえに自然に載ってるイメージを持ちます。よく言われる山のようにどっしり安定した感覚で座ります。正しい姿勢を作ろうと、無理に背筋や首筋を伸ばし、胸を張るなど上半身を操作しないようにしましょう。自分の身体を観察しながら、どこにも力の入っていない安定した姿勢をあせらずじっくり探っていきましょう。あわせて肩や腕から力を抜いていきます。

続いて呼吸です。呼吸についても、無理に腹式呼吸をしようとか、ゆっくり深く息をしようとする必要はありません。鼻や肺の中を空気が行き来している様子や、呼吸につれて上半身がかすかに上下している感覚など、自分なりに呼吸していることを実感・観察しやすい身体の動きにただ注意を向け続けます。今まで人生の多くの時間を同じように呼吸と姿勢で過ごしてきたならば、性急にそれを矯正することは逆に身体を痛めてしまうことにもなります。マイペースで少しずつじわじわと整った姿勢や呼吸をイメージしていきます。


3.引き続き安定して座り続けます

 安定した姿勢を保てるようになるとやがて呼吸もゆっくり安定して自然と調ってきます。体と心をできるだけリラックスした状態にし、自分の中にも周囲になんとなしに静けさを感じていくようにします。

やがて心のなかを様々な思いや感情が次々と押し寄せてくるかもしれません。それが普通なのです。今悩んでいること、昨日の出来事、今日の予定、将来の計画、慣れない座り方に感じる窮屈な身体、眠気、様々な願望・欲望など。そのように心が漂いそれに反応している自分をできるだけ自覚的に観察してみます。「ああ、今私は~ということを悩んでいる。」「また考えている。」「~に苛立っている。」「今身体が反応している。」大切なのは、思考や感情、身体反応の存在をただ認め、それ以上深く立ち入ることをせず、速やかにまた呼吸と姿勢へと注意を戻していくことです。やり始めるとわかりますが、これがなかなか簡単にはいきません。大切なのは、「うまくやる」ことでも「気持ちがスッキリ」することを実感することでもありません。何度心が呼吸と姿勢から離れても、また戻ることを穏やかに繰り返していくことだけです。それを行っているかぎり、それは正しい方法なのです。


ときに重く強いストレスや悩み、苛立ちがある場合には、私たちの心は窮屈になり、暗く狭い囲いの中に自分の執着や不安感情を追い込み、なにひとつ見逃さず何とか処理しなければと懸命になり、時に絶望的な気持ちにもなりがちです。そんな時にこそ自分を責めたりせず、優しくゆっくり息を吸い新鮮な空気をその囲いへ注ぎ込み優しく包み込むようなイメージを持ってみます。そして今度は優しく息をゆっくり吐きながら、限りなく広がる気持ちのいい広大な草原にそれらを解き放ち、あとはただ遠くから見守るイメージを保ちます。息を吸いながら優しい気づきで心や身体を満たし、息を吐きながらゆっくり自分を解放してあげる。これはあくまで例で、どんなイメージを抱いてもいいのです(たとえば空を流れていく雲、川を流れ去っていく葉や花、車窓から飛ぶように流れていく景色など)。またイメージがわかなければそれでもいいのです。自分なりの方法で悩みと呼吸とを上手に「からめて」いきます。できてもできなくても、また呼吸と姿勢に注意を戻していきます。


****


悩みの作法、存分に悩むとは、今そこで経験していることすべてに優しくオープンな気持でいることです。自分や他人、周囲の状況、あるいはまた過去や現在、未来について、常に推測・判断・評価することにエネルギーを注ぎ、消耗してきたことに気づき、それをやめ、すべてに等距離でフラットな姿勢でただ今に穏やかに集中できる心を身につけることで、同じ物事が今までとは違う光景に映ることをめざしていくものです。心があちこちさまざま揺れ動き、思考や感情が様々押し寄せることを止めようとしたり、自分を責め心配事を消し去ろうとすることではありません。姿勢や呼吸がうまくいかないと感じても、そう感じていることについて否定したりネガティブな感情を持たず、ただまた姿勢と呼吸への注意に戻っていくことを繰り返していきます。

こうしたことについて、つい真面目に完璧にやろうとか、~しなければならない、うまくいかなかった、などと考えないことです。問題の解消を早急に期待するような気持ちでやるとなかなかうまくいきません。悩みを消し去る方法ではなく、悩みを上手に抱えられる広く柔軟な心構えを身につける訓練を行っていると考えるといいでしょう。うまく姿勢が決まらないようなら呼吸だけでもいいのです。なにがなんでもその場所でなければならないこともありません。座ることができないのなら、立ったままでも歩きながらでもどれかひとつでもやってみます。時間がなければ移動中の電車やバスの中で、あるいはまたトイレの中でだっていいのです。全部はできなくてもたとえわずかな時間でもどれかはできます。

悩むことはそれがどんな内容であれ、生きる上でとっても必要で贅沢なひとときなのです。「これは自分のための時間、自分のための場所である」ことを自分自身に語り掛け、何がどうであれすべてに優しく寛大でいるよう心がけていきます。できてもできなくても、いまの自分がどうあろうと、です。


いつもお読みいただいてありがとうございます。

メンタルケア&カウンセリングスペース C²-Wave 六本木けやき坂


【その他参考までに】

*「笑顔」で悩む(#^.^#)

笑顔の形を作る、つまり口元(口角)を上げると不思議と穏やかな気分や明るい気分になり、目に表情もできてきます。顔面の筋肉の動きが脳と連動して感情も動くという、これも一種の「形から入る」です(「顔面フィードバック効果・仮説」といいます)。にこやかに悩むって難しいでしょう?笑顔を作りつつ悩むことは難しいのです。作り笑いや照れ笑いは、ダメージを軽減する自己防衛テクニックで、決して不謹慎でもないのです。気持ちを落ち着けようとする時、悩んでいる時だからこそ、あえて自分自身にちょっとニッコリしてみるといいかもしれません。ほんの少しできるだけでいいんです。

 *「鼻孔拡張テープ」を貼っで悩む(#^.^#)

鼻から息を吸って鼻から吐くのが理想の呼吸です。でもいろいろな理由から鼻の通りが充分でない人のほうが意外と多いそうです。普段の生活をしていて口でもつい呼吸しているな、よく眠れていないなと感じていたら、ドラッグストアなどで購入できる鼻孔拡張テープを、就寝時や悩みの作法実行時などに一度試してみて下さい。個人差はありますが、楽でスムーズな呼吸と深い睡眠が可能になります(個人的には結構おススメです)。


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by yellow-red-blue | 2017-07-06 19:15 | Trackback | Comments(0)

「いま」について日々感じること、心動かされる体験や出会いなど、時にカウンセラーとして、また時に仕事から離れ、思いつくまま綴っています。ブログのどこかに、読む人それぞれの「わたし」を見つけてもらえたら、と思っています。


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