2017年 10月 23日
色づく日々 ~ 霜降の頃‘17
カウンセリングリームの窓から外を伺えば、あれほど重々しく垂れこめていた台風の陰鬱な雲や雨は去り、富士山が久し振りにくっきりと青い姿を秋空の彼方に顔をのぞかせ、はるか遠くに浮かぶ切れぎれの雲までくっきりと眺めることができました。けれども、台風一過の強烈な北西風がすさまじい轟音とともに吹き荒れ、公園や街路、あたりの民家の樹木を激しく揺らし、木の葉や小さな枝葉がまるでツバメが空を飛び交うようにあちこち空中高く舞いあがるさまは、何やらマジックでも見ているかのようです。それでも嵐の終わりを告げる鳥たちのさえずりは朗らかで、この風を結構楽しんでいるかのように、突風に吹かれるにまかせてビルの上空を嬉々として漂っています。
遠くに臨む有栖川宮記念公園の鬱蒼とした森の緑が、まるでその下を大きな生き物が這いずり回っているかのように激しく揺れ動く様をしばらく眺めていると、その動きに共振するかのように、なぜか気分が落ち着くようなそれでいて高揚するような、何とも言えない心持にさせられます。
少なからぬ被害をもたらした秋の台風になすすべもなく、通り過ぎるのをただ待つしかない私たち人間もまた結局は自然の一部であり、風雨に翻弄される木々や小鳥たちと同じちっぽけな存在でしかないのでしょう。そして気が付けば今年もあとふた月と少しを残すだけ。時が進んでいくのもまた私たちにはどうすることもできない、とあらためてふと思い当たります。
暦の上では晩秋に入り山々が紅葉に染まる時期ですが、先週末の休日、東京近郊のとある自然公園で友人たちとバーベキューを楽しみました。当日は朝から冷たい雨が降るあいにくの空模様だったのですが、わずかに色づき始めた広大な森林の木々を雨脚が静かに濡らし、炭火のあたたかくいい香りの煙があたりの寒々とした空気と混ざり合うように立ち込める中、コンロの上に雨除けのタープを張り、囲炉裏を囲むかのように静かに語り合うちょっと「身動きの取りづらい」バーベキューは、なんだかかえってより周囲に耳を傾け、自然との接触を強く意識させられるなんとも癒される新鮮なひとときでした。皆が口をそろえた「中止にしなくてよかったね~」の言葉に、秋雨への嬉しい誤算の思いが込められているようでした。
東京のような都会では、秋の紅葉よりもひと足先にハロウィンで街や人が鮮やかに彩られます。最近のハロウィンのちょっと戸惑うような異常な盛り上がりと商魂たくましい街の空気に、大人げなくもひそかに違和感と騒々しさを感じていた私でしたが、最近はそうした流れに逆らうこともなく、カウンセリングルームにもほんのささやかなハロウィンの飾りつけを取り入れるようになりました。
やるせなさの残るセッションが終り、カウンセリングリームをあとにする相談者がふとハロウィンの置物に目を向け、「ああ、ハロウィン。素敵ですね。」と少しだけおだやかに微笑む表情を見ると、やっぱり気分が悪かろうはずがありません。なんのことはない、何やらホッと救われる思いをするのは私の方だったりします。
心配したから、あれこれ考えたからその悩みが明日消えるわけではないのでしょう。自分一人だけが考え動いたから、人生や物事が進んでいるわけでもありません。策をさまざま講じたところがかえって逆効果になったり、期待や不安がよきにつけあしきにつけ裏切られ、思わぬ方向へと進んでいってしまう、などということは私たちの人生にしばしば起こりがちです。だから頭を少し休めて、結果がどうなろうと流れに任せることをたまには自分に許してみる。
今年あとふた月と少しは、それぐらいでちょうどいいかもです。
最後までお読みいただいてありがとうございます。
メンタルケア&カウンセリングスペース C²-Wave 六本木けやき坂