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虹を見たいのなら ~ 春分&清明の頃'19


 あたりが一日の始まりの喧騒で騒がしくなる前のまだ静かな早朝、自宅のベランダで外の空気にしばしぼーっとあたっていると、ときおりゴーというかすかな地鳴りのような音が響いてくるのを聞き分けることがありました。朝のトラックや清掃車、ゴミ回収車といった車両音のたぐいかなとずっと思っていたそれが、実は東京湾上空を羽田空港から離陸していく旅客機のジェットエンジン音だと気が付いたのはほんの最近のことです。はるか遠くに小さなピンのようにしか見えないあの旅客機の音がこんなにはっきりと響いてくることに驚きながら、それが空気という見えないものがあたりに満ちているがためその振動として伝わってくるのだということ、つまりあたりは無(真空)ではない証拠であるということを今更ながら実感したのでした。確実にそれは存在しているのだけれども実際には目にすることはない、意識しなければ気付かないような物事が、私たちの身の回りには実はたくさんあるのだということにしばしば気づかされます。

 少し話は飛びますが、たとえば先日現役野球選手からの引退を表明したイチロー選手は、生涯3089本ものヒットを打ちました。けれどもその陰で、その数倍もの打席数の凡退、つまり「見えない」失敗と負けがあったことの重要性を彼は強調します。野球では3割を超えれば強打者と言われるわけですが、よく考えてみればそれはつまり残りの7割近くは常に「負け」ているということです。その負けがあっての一流選手の証しということならば、私たちの人生にもまた失敗や無駄、遠回りなどない、と考えることだってけっして間違いではありません。



 身の回りにたくさん存在するのだけれども、見えていない、見ようとしないことといえば、この時期、受験という勝負と競争、試練に立ち向かいながら、望みをかなえることのかなわなかったたくさんの人々の存在もそうと言えるかもしれません。桜咲く春の到来のよろこび、卒業という新たな希望への旅立ちというお決まりの情景に隠れて、たくさんの落胆と苦悩があるのもまた現実です。定員10人の学校を100人が受験したなら、90人もの受験生は不合格となっているはずです。けれども私たちが普段見聞きそして注目するのは、結局のところずっと多いはずの「見えない」落胆と喪失体験ではなく、わずか10人の歓喜と笑顔ばかりなのかもしれません。

 私たちの生きている社会には、見えていないがいるはずの多くの人々、世に言われ信じられているものとは別の物事なり事情がある、ということにできるだけ繊細な感受性や優しい眼差し持っていたいなと私は思います。それはいつしか自分がそうした立場に身を置くこととなってしまったそんなとき、きっと素直にまずもって自分に、そしてだからこそ他者にも優しく寛大になれるはずだし、そうあるべきと考えるからです。



失敗して落ち込んで、後悔している自分へ

周囲の人間よりダメな人間だとしか思えない自分へ

周囲の人すべてがうらやましく思えてしまう自分へ

どうすればいいのか、よかったのか考えると胸が苦しくなってしまう自分へ

もう一度初めからなんて、こりごりだと思う自分へ

ひとりでいたいのか、誰かといたいのかわからない自分へ

卒業式なんか出たくない、桜が咲こうが咲くまいがどうでもいいと思っている自分へ

やっぱりいつもこうだと思ってしまう自分へ

泣きたいのほどなのに泣けないのはどうしてだろうと考えている自分へ

虹を見てもただ悲しく、むなしくなってしまう自分へ

ひとりぼっちだと思ってしまう自分へ


 どこへ逃げ込んだって、ふさぎ込んだって不機嫌でもまったく構わないのです。義務やら常識、前向きな思考やまわりの迷惑なんて、下品な言い方ですがクソくらえです。

 ただ、できることならせめて自分の気持ちに対してだけは素直でいたいです。自分が苦しんだりしていることに言い訳なんていらないし、理由を明確にする必要なんてありません。ただ、「ごめんね。今とってもつらいんだ。」そうつぶやくだけで十分です。誰かに、さもなければ自分自身に。エネルギーが枯渇しているときは、明日への明るい見通しや希望なんて描ける力など残っているはずがありません。それがつまづいた人々に与えられた特権であり、社会における役割であるべきです。

 いつか助けや救いはどこからか、あるいは自分の中からきっと必ずやってくるものだと素朴に信じられる世の中こそが真に豊かな社会なのだと痛感します。人生には、悲劇の主人公になることだって時に必要なのですから。



最後までお読みいただいてありがとうございます。

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by yellow-red-blue | 2019-03-22 14:09 | Trackback | Comments(0)

「いま」について日々感じること、心動かされる体験や出会いなど、カウンセラーとして、また時に仕事から離れ、思いつくまま綴っています。ブログのどこかに、読む人それぞれの「わたし」や「だれか」を見つけてもらえたら、と思っています。


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