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一度、自分の外へ出てみる・ストレス社会を生きる④ ~ 立冬の頃’20


 悩みを抱えている時は、苦しい自問自答を繰り返しているようなものです。孤独も感じます。頭の中で思いがあれこれと巡り、ネガティブな気分や感情、記憶に敏感に反応し、どうしても悲観的な現状と将来を予測し苦痛を感じ、自分を責めます。結果むしろ問題の解決が遠のいてしまうような行動パターンを繰り返しがちになったりもします。身体の不調や不具合を訴えることもしばしばです。

 私たちは人間ですから、心情的にさまざま反応しそれに左右されるのはごく自然なことであり、理性合理性のみで私たちの社会が成立しているわけではありません。また、人のものの考え方や受けとめ方、対応や行動の個人差のバリエーションは実に多彩で、こう言っては語弊があるかもしれませんが、程度の差こそあれ私たちの誰もがどこかずれた「まともでない」一面を抱えながらそれを相互に感じ取って生きているものです。短所もあり人と比べ劣っていると感じることもあるでしょう。

 しかし山あり谷ありの私たちの人生はまさに無限の多様性と唯一性そのものであって、その過程においては意志や努力では動かしようのない予測不可能の現実や事実が待ち構えているものです。理想には遠かったにしても、まずまず何とか人生を送ることができているのであれば、そうした自分の「まともでなさ」についていちいち気に病んだり問題視する必要など本来はないはずなのです。

 ただそうは言っても、現実的でなかったり柔軟差を欠いた偏った思い込みや物事のとらえ方、感情や行動のパターンが習慣化していることに気づかずにいると、場合によっては精神的肉体的に深刻な変調をきたし、社会生活機能が著しく低下するような悪影響が人生に及んでしまうこともあります。そうした状態にならないためには、自分の抱える悩みや苦しみについて、思い込みや主観、気分に過度にとらわれずに、それらは対処が可能な具体的課題や宿題であるとしてできるだけ客観的にとらえ直してみる工夫が必要になってます。今までの思考判断・推測、感情に振り回されずそれらが果たして妥当なものであるのかどうかをもう一度見直していく姿勢が大切であるというわけです。

 こうした考え方は、現在心理(精神)療法としてその有効性や効果が確認され広く世界的にも広く普及している認知行動療法に代表されるアプローチのベースにあるものですが、これは単に精神的治療の分野においてだけでなく、円滑な社会生活や人間関係を実現するために有効で応用可能な社会的スキルの一つといってもいいものです。実際さまざまな分野で活用されるようにもなってきているのでご存じの方もいらっしゃると思います。



 ここでこうしたアプローチについて詳細に説明する余裕はありませんが、問題の解決の方法をごく簡単に表現すると、

今自分に起きていることを冷静に分析そして検証し、より適切に考え実行してみる」となります。

 なんだそんなことかと思われるかもしれません。悩んでいるときに冷静に考えられるなら苦労はないと思われるでしょう。確かにその通りで、だから一人悩むことは本来は得策とはいえません。しかしだからといってそう簡単に悩みやストレスについて人にありのままを打ち明けることはできないし、相談できることばかりではないのが多くの人にとっての実情でしょう。人知れずなかなか打ち明けられないからこそ私たちの悩みでありそれがストレスとして感じられるのですから。


 そうであるなら、まずはとりあえず自分で「他人」を作ってしまえばいい。別の言い方をするなら、まずは自分で「他者の視点」を作り出す工夫をしてみてはどうでしょう。自分の頭の中で繰り返し考え込むのをやめ、問題をいったん外に取り出し「形にして」客観的に眺める方策をとることです。それを十分試みてもうまくいかなかったらそのときは他(者)を頼るしかありません。関係で成り立ち関係の中で受け入れられてこその社会のなかの私たちです。その時こそ、この「ストレス社会を生きる」シリーズでも触れてきた、「できることはできる、できないことはできない」を知り、「コントロールをあきらめる」時です。



 具体的にはどうすればいいのかについて、簡単ですが今回と次回に分けて説明します。この方法については注意する点もあります。そもそも向き不向きがあるでしょうし、こうした作業をできる状態にはない人もいるからです。それについても次回触れます。


 では早速その方法に入ります。上で述べた問題解決のための文章、「今自分に起きていることを[冷静に][分析]そして[検証]し、より[適切]に考え実行してみる」で、カッコで括った言葉それぞれに具体的な意味と手順があり、それに沿って考えていきます。

1.冷静に

 「冷静に」には二つ意味があります。今直面している問題について、

  ①紙などに丁寧に書き出していく

  ②役割をひっくり返す

 ①は、この方法の基本であり一番大切な点です。紙に書くということは、問題を「視覚化」して「客観化」を促します。以下の説明も紙に書き出すことが前提です。パソコン等で打っても構わないのですが、大切な資料を作る気持ちを持って丁寧に自分なりにわかりやすく書くようにしていきます。専用の新しいノートやファイルを好きに選び用意することもお勧めです。日記帳を綴るように、あるいはまた重要なプロジェクト企画を練り上げる時のように、大切に自分の悩みを扱おうとすること、そうした準備行動も問題解決のモティベーションを高めるには役立ちます。

 ②は少しわかりにくいかもしれませんが、自分が悩む側ではなく相談される側になってみる、他人に起こっている出来事、場合によっては問題の相手当事者の立場となって捉え直してみるということで、「視点を移動」し「問題を外在化」します。これは問題の論点のずらしやすり替えではなく、「自分」から一歩外へ出て問題を別の方向から眺めてみるひとつのアイディアのようなものです。次回の説明に役立ちます。

 

2.分析

 分析とは、文字通り問題点を「分解(分割)して」考え書いていくということです。何に悩んでいて、それはいつごろからどんなきっかけや状況で始まったのか。そのことについて何を考え、どう感じ、また心身や日常生活にどのような支障が出ているかなど、頭で何度となく繰り返し考えることをいったんやめ、今の悩みを4つのテーマに分けて書き出すことを意味します。

① どんな困りごとなのか?

 これから作る資料のタイトルをつけるようなもので、悩みを簡単に表現しておきます。

② 起こったことの経緯や状況について書く

 自分に起きた出来事や事実関係などを記述していきます。ここは5W1H含め時系列的に少し詳しく書いてみます。箇条書きでもまとまった文章でも自由です。

③ 自分の中で起こっていることについて書く

 この③が一番大切なところです。ここは②と区別し、あくまで問題が起きた時あるいは今の自分の状態について、以下の4つに「分解して」簡潔に描写していきます。

 ・気分、感情:(例:不安、恐怖、パニック、怒り)

 ・頭に浮かぶ考えや予測、記憶:(例:今度もまた失敗するだろう、もうとりかえしがつかない、皆が私の落ち度だと思うだろう、相手こそもっと配慮すべきだ)

 ・身体(生理的)反応:激しい動悸、発汗、不眠、胃痛

 ・自分が取った行動:(例:家族に当たり散らした、仕事を休んだ、飲酒した)

 

 ここで、特に感情面と思考面を分けて内面の状態を挙げていくことは慣れないうちは難しいかもしれません。けれども精神的苦痛に紐づいている自分の意見や思い込み、評価判断をできるだけ数多く表現し挙げていくことはとても大切な作業です。一度にすべてを完成させようとせず、日を改めたり落ち着いて手直ししながら書いていきます。「自分が取った行動」とは、ストレス状況に直面した時にとった自分なりの対処方法や予防策といえます。

 もうひとつ大切なポイントとして、できるだけ客観的な目安を取り入れるために、不安(55%)怒り(80%)自分にはもう無理だ(100%)仕事を休んだ(5%)などのように、各記述ごとにその程度や可能性をひとつの目安として数値化していくと、後で見直す時に役立ちます。まったくの主観で構わないのであまり深く考えずに書いてみましょう。

④ どうなれば悩みは消えるか?

 現時点でのゴール、こうなったら悩みは消えるという現時点で思いつく願望を書いていきます。こうしたいああしたいなど、あまり現実的にならずともいいです。実現不可能なものでも理想でも構いません。思いつかなければしばらくは空欄でもいいです。

 

 次回は後半の「[検証]し[適切]に考え実行してみる」について説明します。


 最後までお読みいただいてありがとうございます。

メンタルケア&カウンセリングスペース C²-Wave 六本木けやき坂

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by yellow-red-blue | 2020-10-29 19:36 | Trackback | Comments(0)

「いま」について日々感じること、心動かされる体験や出会いなど、仕事、また時に仕事から離れ、思いつくまま綴っています。記事のどこかに、読む人それぞれの「わたし」や「だれか」を見つけてもらえたら、と思っています。


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