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 ハラスメントやいじめなど人はなぜ他者を攻撃するのでしょう?その理由をごく簡単に言ってしまえば、攻撃する人は、(相手から)攻撃を受けたと受け取っているから(それに対して反撃した)、というシンプルなものです。

 けれども、これだけ聞くと被害を受ける側にとっては納得も理解できずたまったものではありません。こちらにはまったく身に覚えがないにもかかわらず、「お前がまずやってきたのだがら反撃したまでだ」と言われているようなものなのですから、理不尽きわまりないと考えるのも当然です。

 問題は、攻撃する側に自分の行為に至る認識過程を自覚・理解したうえで行っているわけではないところにあります。表面上はいろいろと理由を並べはするかもしれませんが、もっと深い本当のところについてはきちんと自分でも把握しておらず行動しているのです。けれども攻撃する・されることに自覚がない、あるいは無意識的に行っているからといって、それを加害者側の勝手な思い込みや言いがかりに過ぎないと単純に片付けてしまえば問題の本質が見えにくいばかりか、そうした理不尽な振る舞いへの対処方法も見えてこないことにもなります。

 前回のブログで触れた、私たち人間誰しもに備わる自分を守ろうとする防衛本能にも関係してくるのですが、攻撃する人の心理についてはわかっていないことも多く、私にもちゃんと説明する自信はありません。ですが少し話を分かりやすくするために、今回はストレスとは何かということについて考えてみます。


 

 「ストレスが溜まる」「ストレスから身を守る」「人間関係のストレスから体調を崩した」などと、私たちはストレスという言葉を普段からよく使っています。けれども、この言葉の意味することを結構あいまいなままに使いがちで、実はこうした通俗的な使い方の言葉としてのストレスは、本来の意味からするとあまり正しくはありません。

 もともとストレスという言葉は、工学・物理の世界で使われていた専門用語を、ある生理学者が人間の生体の反応メカニズムを説明する用語として医学・生理学の世界に取り入れ今日的な意味を与えたのが始まりです。

 それによるとストレスとは、生体外の環境からもたらされる何らかの刺激や衝撃、要求に対する生体側のさまざまな反応と定義されます。外からもたらされる刺激をストレッサー(ストレス要因)と呼びます。そしてそうしたストレッサーから自分の身を守り元の生体バランスを取り戻すために、ストレッサーを押し返そうあるいは解消しようと自然に発生する反発ないし抵抗する力がストレス(反応)なのです。つまり、私たちが普段ストレスと呼んでいるものの多くは、実はストレッサーの方であるといえます。細かなことのようですが、ストレスとはストレス(要因)に対する私たちが起こすさまざまな反応のほうであることを正しく理解しておくことは大切です。


 私たちは生きている以上、さまざまなストレッサーに囲まれ絶えず影響を受けます。夏の厳しい暑さや冬の寒さ、空腹、予期せぬショッキングな出来事や身体的痛み、労働や学習、煩雑な家事や通勤の混雑、複雑な人間関係や孤独、心理的な葛藤や圧力を含め様々なこれらの刺激はいずれもストレス要因(ストレッサー)であって、これらにさらされると私たち人間の側には当然のように様々な反応が引き起こされます。ストレッサーに対抗するため、人間の持つバランス回復機能装置として必要な力(反応)がストレスなのです。

 たとえば厳しい夏の暑さというストレッサーにさらされれば、私たちはそれに対処するため苦痛を覚え、気分が悪くなったり、だるさや食欲不振、集中力の低下といった症状をストレスとして経験し、それらをバランスを回復すべく様々な対処法を実行に移すためのシグナルとして具体的な行動へと変換していきます。体温を下げるため汗をかいたり、水分や塩分を欲求し、日陰で休みエアコンをつけ昼寝をして体力を温存したりします。このようにストレスは私たちが生きていく上で避けられない、必須なものです。むしろこのストレスを適切に発動できずにストレッサーのもたらす衝撃をそのまま受け取り圧迫されるままの状態に置かれたときは、肉体的精神的にとても危険な状態に追い込まれることを意味します。

 人は大概の場面においてむしろストレスを必要とする生き物であると考えれば、今の私たちがこの言葉を普段いかにずれた意味で使っているかがわかるのではないでしょうか。


 

 同じように人を攻撃する行為とは、ある種の衝撃なり刺激に対する加害者なりのストレス反応であり、それが対人関係という場において起こるがゆえに、主に他者攻撃という形をとって現れてしまうのだと理解するとわかりやすいかもしれません。

 ただ難しいのは、物理工学の世界に比べて、私たち人間の生体あるいは精神世界で繰り広げられる、とりわけ対人関係におけるストレッサー・ストレス関係ははるかにわかりにくく、そしてそのバリエーションがあまりに多彩であることです。ストレッサー・ストレス関係の背後には、様々な個人差が存在します。まさに私たちの個性・人格や対人関係における力学は、指紋のように同じものはひとつとしてないといえます。ストレッサーの認識・受け止め方やそれに呼応するストレス反応とがバランスや抑制を欠くものであったり、相互に関連性が容易には見えないものとして表出することもしばしばで、何が引き金となって、なぜそのような目に逢ってしまうのか、他者にもまた自分自身にも理解し難しいものとなっているケースが多いのが実情のようです。

 次回は、いくつか例を挙げながら引き続きこの問題について考えてみます。



最後までお読みいただいてありがとうございます。

メンタルケア&カウンセリングスペース C²-Wave 六本木けやき坂

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# by yellow-red-blue | 2019-08-23 13:30 | Trackback | Comments(0)

「いま」について日々感じること、心動かされる体験や出会いなど、カウンセラーとして、また時に仕事から離れ、思いつくまま綴っています。ブログのどこかに、読む人それぞれの「わたし」や「だれか」を見つけてもらえたら、と思っています。


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